デジタルテレビ放送時代の受信・再生・キャプチャ(2004年編)

(2004年02月08日追加)

私の家で使っているテレビは,1987年製。
製造後17年になるわけだが,今も大きなトラブルなく稼働している。エラいものだ。
しかしさすがに最近,僅かながら,画面の色が薄くなったり暗くなったりと周期的に変化する現象がたまに発生する。
これまでは気にならなかったのだが,DVD-Video を作って,どういう作り方にすれば画質が良くなるのか考えるようになると,せっかくいい画質にしても再生環境がこれでは,と感じられてきた。

そこで,テレビの買換えを検討し始めた。
おりしも,地上波デジタル放送が2003年12月に開始され,アナログ放送は2011年7月24日に終了予定。
電気店は「いま買うならデジタルハイビジョン対応テレビを」キャンペーンの真っ最中だ。

いま何を買うとムダになって,何なら将来も使えるのだろうか。
デジタル放送は今のテレビでは綺麗に見られないのか。あるいは全然見られないのか。
だいたい,デジタル放送って何なんだろう?

気がかりなことがもう一つ。
デジタル放送は,すべての番組について「コピーワンス」コントロールを導入するという。
そうなると,パソコンでテレビ番組をキャプチャすることはできなくなるのだろうか。

そんなことを調べて,いま私はどうすればいいのか,考えてみた。

[目次]


そもそもデジタルテレビ放送って何だ

デジタルテレビ放送とは,一言でいえば,MPEG-2 のデータを使った放送だ。
ただし,DVD-Video などで使われる MPEG-2 は PS(プログラム・ストリーム)というデータ形式であるのに対し,デジタルテレビ放送では TS(トランスポート・ストリーム)という形式が使われている。
また,つぎの4種類の品質の映像フォーマットが使われている。

呼称 有効画素数 アスペクト比
525i 720×480 16:9, 4:3
525p 720×480 16:9
750p 1280×720 16:9
1125i 1920×1080 16:9

呼称の数字は走査線の数,そのあとの i はインターレース(飛び越し走査)方式,p はプログレッシブ(順次走査)方式を示す。
単純にいって,数字が大きい方が綺麗で,同じ数字なら i より p の方が綺麗だ,ということになる。
525i,525p が標準規格映像(SD),750p,1125i がいわゆるハイビジョン(HD)である(今のところ,インターレース方式しか行われていないって話だけど)。

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デジタルテレビ放送時代を前にした今,テレビを買うなら

で,これを受信するには,対応するチューナーが必要だ。
既に BSデジタルも地上波デジタルも受信できるチューナーというのが発売されている。いずれ,デジタル放送が主流になったらこの手のものを買うことになるわけだ。
これと繋いで使うことを考えると,どんなテレビを買ったらいいのだろうか。

まず,いちばん手軽で確実な繋ぎ方は,デジタルチューナー内蔵テレビを買うことだ。しかしこれは,現状では高くつきすぎるので問題外。
それ以外の方法としては,つぎのものがある。
どの繋ぎ方でも,音声は赤と白のRCAピンプラグで接続するが,映像の接続方式が異なる。
  ※参考資料:「映像端子の種類と解説」

ビデオ端子による接続
チューナー側のビデオ端子(コンポジット端子)とテレビ側のビデオ端子とを,ビデオケーブル(黄色いRCAピンプラグを持ったケーブル)で接続する方法。
現在ではビデオ端子を持っていないテレビはないだろうから,最低,チューナーをここに繋いで見ることはできる。
ただ,デジタルで受信したものをアナログにしたうえ,輝度信号(Y)と色信号(C)とを混合した状態(composit)にしたものを渡されるので,今のアナログ放送を見ているのと同じことであり,デジタル放送のメリットはない。
S端子による接続
チューナー側のS端子とテレビ側のS端子とをS端子ケーブルで接続する方法。
この接続方式もほとんどのテレビで可能である。私の家の 1987 年製テレビにさえ,S端子はある。
輝度信号(Y)と色信号(C)とが分離されて(separate. だからS)渡されるので,ビデオ端子による接続よりマシな画質だが,やはり今のアナログ放送を見ているのと同じこと。
コンポーネント端子による接続
チューナー側のD端子と,テレビ側の緑・青・赤3つのコンポーネント端子とを接続する方法。
輝度信号(Y)と青色差信号(CB ないし PB)・赤色差信号(CR ないし PR)に分けて渡される。これは基本的に次のD端子と同じ。
ただし一見同じコンポーネント端子でも,ハイビジョンに対応しているものと対応していないものとがある。
Y/PB/PR とあれば,ハイビジョン対応らしいが,どの種類のハイビジョンに対応しているのかまではわからない。
D端子による接続
チューナー側のD端子とテレビ側のD端子とを接続する方法。
コンポーネント端子と同じ映像信号に加えて,インターレースかプログレッシブかの別,アスペクト比の切り替え信号もまとめて伝送される。
D端子にも,D1〜D5までの種類があり,通過する映像信号フォーマットが次のように違っている。
ハイビジョンである 1125i に対応しているのは D3以上である。
規格 525i 525p 1125i 750p 1125p
D1 × × × ×
D2 × × ×
D3 × ×
D4 ×
D5

ここでわかったことが一つ。
D端子の「D」はデジタルのDではないらしい。
上にも書いたように,D端子を通る信号はコンポーネント端子を通るものと同じで,アナログ信号なのである。

さて,本題に戻って,いまテレビを買う人はどうすればよいのか。まとめるとこうなる。

まず,今のアナログ放送の画質で不都合を感じない人は,いまテレビを買うにしても,従来と同じ方式のものを買ってかまわない。
「地上波アナログ放送が終わったら見られなくなる」のは,地上波デジタルチューナー内蔵テレビを除き,D3端子がついていようがD4端子がついていようが同じこと。チューナーを外付けしなければならないことに変わりはないのだから。

他方,今の画質に不満がある人は,D端子付きのを買うことになる。 D端子と名が付けば,最低のD1であっても,ともかく信号がコンポーネント化されているのでビデオ端子やS端子での接続よりは画質がいい。D3端子以上が付いていればハイビジョン画質を味わえる。
デジタルテレビチューナーと繋ぐまでは,これらの端子は出番がないけれど,D3端子が付いているということは,プログレッシブ方式の信号に対応しているということだから,プログレッシブ再生 DVD プレイヤーを使っている(または使う予定)ならば,今すぐにもその画質の良さを感じられるわけだ。

もっと短くまとめるとこういうことだ。
いま必要なものを予算内で買いましょう。将来のために良い物を買っておく必要はありません

で,私は結局どうしたかといえば,もう少し今のテレビを使うことにしたのだった。

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デジタル放送の録画・キャプチャ

さて,デジタル放送になると,録画・キャプチャはどうなるのか。

現状で行える録画・キャプチャの方法と,それに対するコピーコントロールの方式は次のようになる。

A. デジタル放送をそのまま記録する方法(ビットストリーム記録)
デジタル放送チューナーには i.Link 端子(DV端子,IEEE1394端子)がある。これを D-VHS 方式のビデオデッキにつなげば,デジタル放送をそのまま録画(というよりコピー)できる。
HS モードで録画すれば,ビットレート 20 Mbps を超えるハイビジョン放送も,そのままのビットレートで保存できる。
なお,デジタルチューナーの i.Link 端子をパソコンの IEEE1394 端子に繋いでもキャプチャはできない。けれど,D-VHS デッキに録画したあと,デッキから IEEE1394 経由でパソコンに取り込むことは(Windows XP なら)できるらしい。フリーソフトの CapDVHS というのを使えばできるのだそうだ。
このソフトは,次のページでダウンロードできる。
  ・『でく』のページ
この経路での録画を行う機器には,DTCP(Digital Transmission Content Protection)とよばれる機能が付随し,CCI(Copy Control Information)に従って制御が働く。CCI には,「コピー自由」「コピーワンス(一世代のみコピー可)」「コピーネバー(コピー一切不可)」という3種類がある。
「コピーワンス」属性の付いたデータを受け取ると D-VHS デッキは,属性を「コピー禁止」に置き換えたうえでデータをコピーする。したがって,録画したものはそれ以上ダビングできないことになる。
B. デジタル放送をアナログにしてからデジタル録画する方法
ほとんどの HDD/DVD レコーダーがこの方法による録画をしている。
デジタル放送が MPEG-2,レコーダーの記録方式も MPEG-2 なのだから,デジタルのまま録画されるように思っている人がいるかもしれない。まして,DV 端子付きの機種などは,きっとそうだろうと思ってしまう。しかし,そうではないのだ(唯一の例外は,デジタル放送チューナーを内蔵した SHARP の DV-HRD シリーズ)。
チューナーがアナログに変換した信号が,ビデオ端子やS端子を経由してレコーダーに渡され,レコーダーがまた MPEG-2 にエンコードしているのである。
このような,アナログ入力のデジタル録画機器には,CGMS-A(Copy Generation Management System - Analog)とよばれる機能が付随し,DTCP と同様に CCI に従った制御が働く。
そして,CCI が「コピーワンス」である放送については,コピーワンスを実現できる技術に対応した機器・メディアでしかデジタル録画ができない。この技術が CPRM (Content Protection for Recordable Media)とよばれるもの。これに対応した機器では,コピーワンスの信号を含んだデータを受け取ると,使用しているメディアに固有の鍵を使わないと復元できないよう暗号化した形にして記録する。したがって,もうコピー不可となる。いわゆる CPRM 対応の HDD/DVD ハイブリッドレコーダーでは,このような記録をしたうえで,ハードディスクから DVD-RAM,DVD-RW(VRモード)への内部移動をすることができるが,それ以上はコピーできなくなる。
C. デジタル放送をアナログにしてビデオテープに録画する方法
VHS や S-VHS のビデオデッキは,デジタルテレビ放送を録画する場合でも,チューナーからアナログ信号を受け取って,それをアナログ録画することになる。
この経路に対してのコピー制御技術は,これまでと同じマクロビジョン信号くらいしかない。
マクロビジョンは,映像信号に異常信号を紛れ込ませることにより,ビデオデッキを誤動作させることでコピーを不可能にする方式である。「1世代のみコピー可」というようなオプションはない。マクロビジョン信号入りで放送するわけにはいかないから,チューナーからアナログ録画したものをダビングすることは,今後もこれまで同様にできる。

では,応用問題。
コピーワンスの放送を次のような経路でダビングしていくと,どうなるのだろうか。

チューナー → アナログ録画 → デジタル録画
最後のデジタル録画はやはりコピーワンスであり,CPRM 対応の機器・メディアでしか行えない。
これは,CGMS-A 信号は,アナログ信号にしても消えるわけではなく,ただアナログ録画機器がそれに反応しないというだけだから。
チューナー → デジタル録画 → アナログ録画
これは,Web 上のある書き込みによると,中間に入っているデジタル録画機器のメーカーによって結果が異なるらしい。東芝やパナの HDD/DVD レコーダーでは再生の際にコピー不可にして(マクロビジョン信号を付加して)出力するけれど,Pioneer のでは付加しないのだそうだ。
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デジタル放送になるとパソコンではキャプチャできない?

2004年4月からは,デジタル放送の全番組が「コピーワンス」化されるのだという。
上に書いたように,このことの影響は C.の経路でのアナログ録画には及ばない。
また,A. の経路は,放送を完全に同一に複製できてしまう以上,コピー制御が及ぶのもしかたのない面がある。

しかし,B.の経路での録画に対する影響は極めて大きく,広い。

メディアが劣化してもデータを救えない

まず,「コピーワンス」であるから,一度 DVD メディアに記録したら,もうデジタル録画できない。
「デジタルデータは劣化しない」というのは,コピーしても劣化しないというだけのことで,メディアは劣化する。そして,メディアが劣化した場合の打撃は,アナログより大きい。DVD-RW はテープメディアじゃないから伸びてダメになることはないが,20年くらいすると経年変化でデータが消えてしまう可能性もあるし,傷やホコリに滅茶苦茶弱い。
デジタルデータの長期保存には,メディアからメディアへコピーできることが必須といってもいいくらいなのに,コピーができないなんて,ひどいじゃないか。

「コピーワンス」が「コピーネバー」と同じことに

それでも,一世代とはいえ録画できるなら,まだいい。
いま発売されている HDD/DVD レコーダーはほとんどすべて CPRM に対応しているから,コピーワンスの放送の録画が可能だ。デジタル複製をそれ以上(アナログ経由でさえ)できなくなることや,最も普及しているメディアである DVD-R に現状では録画できないこと(2004/12/12訂正:この点は,DVD-R に録画できる機種が次々登場したのでいちおう解決した。ただし,CPRM 対応の DVD-Rメディアでなければならず,割高)など,不便な面は多いが,それでもとにかく録画できる。

しかし,パソコンのハードディスクは CPRM 対応メディアではないから,CGMS-A に正しく反応するキャプチャボードは,信号を検出するとキャプチャを中止してしまう。「コピーワンス」が「コピーネバー」と同じ意味を持ってしまい,いっさい録画ができなくなるのだ。 (2004/12/12追記:現在では,コピーワンスを実現するキャプチャボードもある。Canopus の MTVX2004HF がそれだ。これは,録画したときに使った(同じIDをもつ)MTVX2004HF が装着されたパソコンでのみ再生ができるというもの。詳しくは,「元麻布春男の週刊PCホットライン ---- B-CASカードに守られた放送の未来」参照。ただしこれだと,録画した映像はそのキャプチャボードと運命を共にすることになる)

B.の経路は,デジタル放送のデジタル録画とはいえ,一度アナログを経由するのだから,これまで自由だったアナログ放送のデジタル録画と何ら変わりのない行為だ。
それを規制することを正当化する根拠はいったい何なのか。
よーく考えたいと思う。
そして,地上波デジタルテレビ放送が受信できるようになっても,パソコンでキャプチャできないのであればしばらくは切り替えないでおこう。

ケーブルテレビが地上波デジタルになるとき

ただ,心配だったのは,J-COM がいつ地上波デジタル放送に切り替えるのかということ。
私の家には,加入はしていないが J-COM のケーブルが来ていて,テレビはそれを経由して視聴している。今後も,ここに住んでいる限りはテレビアンテナなど設置せずにケーブル経由で見るつもりでいる。
だから,J-COM が地上波のアナログ放送を伝送してくれなくなったら,デジタル放送を視聴するしかなくなってしまう。

そこで,2004年1月の終わり頃,J-COM に問い合わせをしてみた。
その回答には,2005年末をメドに,同社ケーブル経由で地上波デジタル放送の視聴ができるように準備をしているけれど,それ以降もアナログ放送を継続するとあった。
ケーブルテレビ会社も2011年7月までアナログ放送継続が義務づけられているらしい。ひと安心というところだ。

CGMS-A に反応しないキャプチャボード

実はもうひとつ,期待していることがある。
それは,私が使っているキャプチャボードの Canopus MTV-1000 は,CGMS-A に反応しないのではないか,ということだ。
'CGMS-A' と 'MTV-1000' をキーワードにして Google 検索すると,そのような記述があちこちにある。

著作権法30条1項2号により,私的使用目的の複製を行う場合でも,技術的保護手段の回避を行うことにより可能となった複製を,その事実を知りながら行うことは,権利者の複製権を侵害する行為に当たるとされている。
しかし,技術的保護手段の回避とは,制御のための信号を除去または改変することである。除去も改変もせず,ただ複製に使う機器が古くてその信号の意味を理解しないためにコピーが可能となってしまうのは,技術的保護手段の回避には当たらない。
この点については,判例が出ているわけではないが,日本語の理解として当然のことだろう。

MTV-1000 は,マクロビジョン信号は過剰に検出するが,CGMS-A 信号には反応しないようだ。
Canopus からはより高性能な後継製品が発売されているが,このボードは交換しないことにしよう。

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